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2016年12月21日号

処遇改善加算に新区分 来年度の臨時報酬改定で

 介護人材の処遇改善を目的に、来年度に実施されることが決まっている臨時介護報酬改定について、12月9日に開催された第133回社会保障審議会介護給付費分科会で審議報告案が取りまとめられた。従業員のキャリアアップの仕組み構築を促し、介護職の給与を月額1万円相当改善する。


月1万円の給与増

 臨時報酬改定は、8月2日に閣議決定された「未来への投資を実現する経済対策」を受けて行われるもの。現行の介護職員処遇改善加算と同じ位置づけで、昇給と結びついた形でのキャリアアップの仕組み構築を評価する区分を新設する。なお、財源は税収で賄う見込みだ。 

 新設する加算区分では、現行の介護職員処遇改善加算(I)の算定要件に加えて、事業所が、職員の経験や資格に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき、定期に昇給を判定する仕組みを設けることとする。この条件を満たせば介護職員の給与月額1万円相当の処遇改善が見込まれる。

 これまでの給付分科会の議論においては、加算の対象職員や使い道について意見が分かれていた。取りまとめ案では、介護人材の確保を優先して、現行の処遇改善加算の取り扱い通り、介護職員のみを対象とする。職場環境の改善などの用途の拡大も見送り、賃金改善に直接結び付けるものとする。 


離職防止等の効果 検証も

 委員は取りまとめ案について、概ね了承した。本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は、今後の改定に向けて「介護職員の処遇改善に反対するものではない」と前置きした上で「保険料は負担側も納得できるよう、利用者のサービスに使われるべき。財源はどこから出るのか、制度の根本を見直す議論が必要」と述べた。

 井上隆委員(一般社団法人日本経済団体連合会常務理事)も「給付の裏には負担があることについても、認識を広げるべき」と発言した。

 安部好弘委員(公益社団法人日本薬剤師会常務理事)は「新設要件が、職員の離職防止やモチベーション向上に繋がったのか評価も提示してもらいたい。単に『勉強しろ』では離職を促す可能性もある」と発言した。


【新設するキャリアパス要件に関して評価する事業者の取り組み例】

◎「経験に応じて昇給する仕組み」…勤続年数、経験年数などに応じて昇給する仕組みを構築する。

◎「資格等に応じて昇給する仕組み」…介護福祉士、実務者研修修了者などの取得に応じて昇給する仕組みを構築する。既に資格を有して就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。

◎「一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み」…実技試験、人事評価など結果に基づき昇給する仕組みを構築する。客観的な評価基準や昇給条件を明文化していることが条件。