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2017年04月19日号

介護の森 社福立ち上げ鹿児島市内に特養

 鹿児島を拠点に在宅から施設サービスまで幅広く展開する介護の森(鹿児島市)は4月、新たに設立した社会福祉法人で特別養護老人ホームを開設した。会社設立から10年を迎えた同社の軌跡と今後の展開について日高憲太郎社長に聞いた。

 


── 今回、社会福祉法人を設立し特養を開設した。その狙いは


日高 10年前に居宅介護支援事業所を開設して以来、訪問介護・看護、有老・サ付き住宅などを鹿児島、宮崎で開設してきた。鹿児島市内では少しずつ知名度が高まってきたが、やはり地方都市ではまだまだ利用者の社福・医療法人に対する無意識的な信頼がある。また地域包括ケアを考えた場合、数あるサービスの中で(介護度の高い高齢者を受け入れる)特養が持つ役割は大きい。

 


── 現在の事業所数は24、一昨年は東京でもグループホームを開設した。今後の計画は

 

日高 鹿児島県は高齢化率が30%と高く、今後病床が削減されることを考えれば、まだまだ在宅・居住系含め介護サービスは足りていない。具体的な数値目標は無いが引き続き開設は続けていく。

 


── 東京の新設、海外展開も検討している

 

日高 介護職はやりがいがあっても給料が低く夢を持てない、家族ができても生活がままならないのでは話にならない。好きな介護の仕事を続けてもらい、給料も上げていくには規模の拡大が必要だ。介護にやりがいを感じているスタッフが金銭的な理由で異業種に転職してしまうのは、業界的に見ても大きな損失だろう。


 スタッフには様々なタイプがいる。「給料は高くなくても定時で帰りたい」、「現場は好きだけど管理職になりたくない」、そして比率は少ないが「介護の仕事で上を目指したい」というタイプだ。なり手が少ない介護業界にあって、経営者はすべてのスタッフの要望を叶えなければならない。上を目指したいと考えてくれるスタッフがいるなら、彼らを引き上げるステージを用意する必要がある。単価が決まっているなら客数を増やす。利益を上げてスタッフに報いていきたい。

 


── 規模拡大と質向上の両立は難しい

 

日高 サービスの質が伴わないなら新規開設は控えるべきだ。当社が運営するサ付き住宅では末期がん患者も受け入れ看取りまで対応している。近隣の病院からも「介護の森であれば安心して退院させられる」と一定の評価を得ている。サービスの質、つまりスタッフ教育は最重要タスクと考えている。


 何も利益追求だけが目的ではないし、それであればこの業界で働きはしない。私は看護師で、独立前は救急医療の現場で働いていた。日々目の前で何人もが亡くなっていく中で、「生きる」に寄り添う介護の仕事はやりがいが大きい。

 


── 運営の効率化が求められている

 

日高 スタッフは利用者と向き合うべきで、そのためには間接業務を減らす必要がある。記録にタブレット端末を使ったり、居住系施設では入居者一人につき一台の服薬支援ロボットの導入を進めている。安全性を担保しながら効率化への投資は続けていく。

 


── 介護の森の社長として、また社福の理事長として今後目指すものは


日高 学生にも働いている人にも、介護が夢のある職業になっていくようその一翼を担いたい。そのためには綺麗事を並べるだけではなく、活躍できるステージを作り続けることだと考えている。