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2017年06月14日号

ICT活用で常時見守り実現/社会福祉法人やすらぎ会

 最新のICTを採り入れ利用者の見守りを実現したのは、社会福祉法人やすらぎ会(青森県八戸市)が運営する「白山台やすらぎ館」。サービス付き高齢者向け住宅として昨年4月に開設。センサーやカメラ、介護記録システムを活用し、入居者の安全や健康をサポートしている。

 


 「介護の担い手の減少に対応するため、介護負担を軽減する仕組みを導入したい」(総合施設長・齋藤呂文氏)。


 もともと通信関連企業に勤務していた齋藤総合施設長の発案で始まったのが新設する有料老人ホームのICT化。最新の記録システムや見守りシステムを活用して介護負担の軽減に取り組んでいる。


 ブルーオーシャンシステム(静岡市、以下ブルー社)、カマルク特定技術研究所(鹿児島県鹿屋市、以下カマルク社)、ナカヨ電子サービス(東京都港区、以下ナカヨ社)の3社が「みまろぐクラウド」を構築。ブルー社の介護記録システム、カマルク社のIoTセンサー、ナカヨ社のナースコールが連動したシステムで、24時間リアルタイムに利用者の状態を把握。業務の簡素化、記入漏れ防止、人件費の削減に効果を発揮する。


 ブルー社が提供するブルーオーシャンノートは、タッチパネル操作で簡単に記録できるのが特色。インターネットブラウザで動作し、台帳、ケアプラン、介護記録、予定を統合管理する。柔軟なカスタマイズ性を有しており、使用中の紙の帳票をシステムで再現することも可能。写真を含めた大容量データを長期間安全に保管。事業規模に応じて拡張することもできる。


 カマルク社は各種センサーを開発。居室内にはベッド上の天井の非接触バイタルセンサー、入口ドア部分の開閉センサー、トイレ天井の人感センサーを設置。バイタルセンサーは対象者の心拍、呼吸、体動などの生体情報を自動的に記録。共有部には温湿度センサーを設置し、施設内の温度・湿度を常時モニタリングする。
 ナカヨ社が提供するナースコールは、ひとつの制御装置で電話とナースコール両方の役割を果たす。


 各種センサーにより得られる「心拍・呼吸帯域」、「体動」、「トイレ利用」、「在室」、ナースコールにより得られる「コール発報」のデータはブルーオーシャンノートへ自動送信され、利用者別・データ種別ごとに整理され保存される。


 「総合ワークシート上ですべてのデータが時系列に表示され、利用者の動きやコミュニケーションの経過などを一画面で把握することができる」(齋藤氏)。
 施設内の入居者・スタッフの状態を3Dグラフィックで表示。施設内の異常を画面上にリアルタイムにプロットする。


 エレベーター・ドアのロックと共有部のカメラを用いて、認知症者などの外出の抑止や捜索が容易になる効果もある。


 今回、利用者の安心・安全と、確実な事業運営のために一気通貫で、見守りから介護記録、請求、売上管理・分析までサポートしたのが大塚商会(東京都千代田区)。業務ごとの単一ソリューションでの部分最適はもちろん、業務全体の最適化手段をICT、IoTなどを組み合わせることでシステム構築した。


「どこで何が起こっているか即座に分かるシステム。利用者はもちろん家族にも安心を提供できる。スタッフの省力化にも役立っている。今後はビッグデータの解析にも活用していきたい」(齋藤氏)。 


「白山台やすらぎ館」はRC造4階建ての建物で居室数は69室。専有面積が18.9平米のAタイプと20.15平米のBタイプを用意。1階にデイサービス、訪問介護、居宅介護支援事業所とクリニックを併設。現在各種センサーを240台、IPカメラを20台、スタッフ動態管理用のビーコンを10台導入している。

 
 入居者は要支援から要介護度5まで対応。スタッフはデイサービスに7名(うち看護師3名)、訪問介護に15名(うち看護師2名)が在籍。重度者への対応とICTによるサービスを武器に入居促進を図っていく方針だ。

 

 ハード面ではエアコンの温風を用いた床暖房システムや、昼間と夜間の空間の雰囲気を光色の変化で演出するLED照明器具を採用。ランニングコストの低減も実現した。


 入居費用は家賃が4万2000円(Aタイプ)、食費4万5000円、管理費1万円、生活相談費1万8500円などで合計13万8500円から。自費サービスで買い物代行や散髪なども提供している。


 やすらぎ会は障害者関連サービスで実績。白山台やすらぎ館にも障害者向けのケアホームが隣接している。